台湾の火鍋文化・バイキング形式の火鍋食べ放題

台湾の火鍋はバリエーションも多く、一人鍋や食べ放題など街中のいたるところで火鍋店の看板を目にします。今回は、台湾の火鍋文化について紹介します。

そもそも「火鍋」という言葉は、中国四川省周辺の地域で作られるような唐辛子がたっぷり入った「火のように辛い鍋」というイメージを持たれがちですが、中華圏では鍋料理全般のことを総称して「火鍋」と呼びます。もちろん唐辛子や山椒などの香辛料を使用した辛い鍋もありますが、そのような辛い鍋は「麻辣(マーラー)火鍋」と呼ばれ、辛さのない普通の火鍋とは区別されています。

また、ひとつの鍋を半分に仕切って辛い味と辛くない味(2種類の味)を両方楽しめるものは「鴛鴦(ユエンヤン)火鍋(おしどり鍋)」と呼ばれます。

台北で有名なオーダー式食べ放題の火鍋店にて。

また、台湾の火鍋店は一つのお店で色んな味のスープや具材を選べるというのが大きな特徴です。日本の鍋のお店というと、だいたい「もつ鍋」や「ちゃんこ鍋」、「しゃぶしゃぶ」、「水炊き」といった専門店が一般的ですが、台湾の一般的な火鍋店では、一つのお店でバリエーション豊かなスープや、肉や海鮮などの具材を自由に選ぶことができます。ただし、「麻辣火鍋」と店名にあるお店は基本的に辛いスープがメインとなりますので、特に辛いものが苦手な方は入店の際にご注意ください。

台湾で食べられる火鍋は大きく分けると「辛いもの」と「辛くないもの」があり、選べるスープの種類もあっさり系からこってり系まで多種多様です。ちなみに、鍋のスープのことは中国語で「鍋底(グオディー)」と言います。火鍋を注文する際は、まずはこの鍋底から選んでいきます。

一人鍋を堪能中。テーブルの穴に鍋が埋め込まれているので、見た目よりも鍋が深いです。

それでは、台湾火鍋ならではともいえる鍋底の種類を紹介していきます。

  • 原味:基本的な白湯(パイタンスープ)もしくは、醤油ベースのあっさりしたかつおだし。
  • 養生鍋:もともとは漢方をベースとした薬膳スープのこと。ただし、最近では原味のものも養生鍋と呼ぶことが多い。
  • 牛奶鍋:ミルク鍋のこと。チーズが入った「起司牛奶鍋」というのもある。
  • 番茄鍋:トマト鍋のこと。トマトの酸味と濃厚な味わいが特徴。
  • 咖喱鍋:カレー鍋のこと。カレー粉を使ったスープが意外とあっさりしている。
  • 韓式包菜鍋:キムチ鍋のこと。辛めに味付けされたキムチが食欲をそそる。
  • 麻辣鍋:いわずと知れた、唐辛子などを使用した辛いスープのこと。
  • 素食鍋:ベジタリアン向けのスープのこと。
  • 臭臭鍋:原味スープに臭豆腐を混ぜたもの。台湾オリジナルスープのひとつ。
  • 沙茶鍋:沙茶(シャーチャー)という台湾オリジナルのバーベキューソースを使ったスープ。沙茶自体は魚介ベースに香辛料などを混ぜた独特の味わいで、台湾人熱愛の調味料。

これらの他にもお店で開発したオリジナルスープなどもありますので、定番の味も良いですが、気になるものはどんどんチャレンジしてみると楽しいですよ。

中国や香港、マカオ、台湾など中華圏全体で親しまれる「火鍋」ですが、それぞれの地域によって独自の進化を遂げていて、台湾も台湾ならではの特徴があります。中華圏の他の地域では一般的に、鍋底を選び、それぞれ好きな具材を個別でオーダーしていくというスタイルで、どちらかというと”大人数でたくさんの種類の具材をシェアする”イメージです。一方の台湾の火鍋は、一人前ずつの小さな鍋にスープと具材がセットになっている「一人鍋」か、もしくは好きな具材を好きなだけ食べられる「吃到飽(食べ放題)」というスタイルが主流で、”少人数でも大人数でもそれぞれ自分の好きな鍋を食べられる”イメージです。

食べ放題は自分の好きなものを好きな分だけ食べられる上に、鍋は一人用の小さな鍋(一人鍋タイプ)になっているお店が多いので、台湾の火鍋はかなり自由度が高いです。

バイキング形式の食べ放題では、カウンターからトングで好きな食材を自分のボウルに盛ります。

また、台湾の火鍋で忘れてはいけないのが、鍋のタレは自分でブレンドして作るということです。セルフサービスカウンターには何種類もの調味料や薬味が置いてあり、それを自分の好みに合わせてブレンドしていきます。

代表的な調味料としては、醤油、酢、ラー油、ごま油、ピーナッツだれ、沙茶(台湾バーベキューソース)などで、薬味はネギ、にんにくのすりおろし、ゴマなどがあります。他にもお店特製のタレなどもありますが、自分好みに色々と組み合わせて、自分の火鍋に合うセルフオーダーメイドのタレを作ってみると楽しいですよ。

それでは、私が台湾で一番衝撃を受けた「バイキング形式の火鍋」を紹介していきます。

ご覧の通りの大規模なバイキングコーナーは、火鍋の具材の海鮮やお肉や麺だけでなく、一品料理の前菜や点心、フルーツやケーキやアイスクリームなどのデザート、ドリンクまで、全部フルコースで取り揃っています。もちろん全て食べ飲み放題です。

台北市内はここまで食べ放題が充実している火鍋店は少ないですが、ちょっと地方に行けば、この程度の食べ放題火鍋店はあちこちに見かけます。店内に入った瞬間からこれだけの食べ放題の食材を目の前に、食いしん坊の私はテンション急上昇です。

写真は一品料理のコーナーです。火鍋がメインなのに、この一品料理だけでもお腹いっぱいになるぐらい種類豊富です。台湾の食材をふんだんに使った定番料理を始め、大根餅や焼売や小籠包などの点心、ラーメンや煮魚やお肉の角煮、更には時間毎に出来立ての魚料理も並べられます。

御察しの通り、食べ放題が始まると胃袋の休まる時間なんてありません。メインの(はずの)火鍋を食べつつも、バイキングコーナーに出来立ての料理が出てくると、みんなすぐに集まって取りに行きます。

野菜コーナーです。もはやスーパーの生鮮食品の陳列みたいです。日本では見慣れない野菜がたくさんあり、野菜好きとしてはテンション上がりまくりです。ここぞとばかりにキクラゲと色んな種類のキノコを食べました。私は鍋底を薬膳スープにしたので、”特製デトックス鍋”なるものが出来上がりました。これで数日の炭水化物の食べ過ぎは相殺です。

鮮魚コーナーです。鮮魚だって好きなものを好きなだけ取っていきます。白身魚やサーモン、海老や牡蠣や貝類もあります。これだけ食べ放題だなんて日本では有り得ませんよね…。自分の火鍋に海老と貝類をたくさん煮込んで自分だけの”海鮮出汁鍋”なんていうのも作れちゃいます。

写真は撮らなかったのですが(見た目として遠慮しました)、この隣には精肉コーナーもありました。豚肉、牛肉、鶏肉、ちょっと珍しい羊肉や鴨肉も揃っています。種類もレバーから砂肝やタンまで、スーパーの精肉コーナーにあるものは全て取り揃っています。私は大好物の「鴨血(ヤーシュエ)」をここぞと食べました。

「鴨血(ヤーシュエ)」はアヒルの血を固めて作った食材で、台湾では麻辣火鍋の具材の定番です。見た目はレバーのようですが、食感は固めのゼリーのようでプリンプリンとしています。味や匂いは特になく、鍋に入れて汁を吸わせて食べるのが一般的です。栄養価が高い食材として広く知られ、貧血予防や便秘解消や免疫力アップなどの効果が期待できるため、美容に敏感な女性に特にオススメの食材です。見た目さえ気にしなければ、是非台湾に行ったらトライして欲しいです。

デザートコーナーには、アイスクリームやケーキやプリンや、新鮮なフルーツもたくさん並び、この日は薬膳杏仁プリンもありました。コーヒーやお茶類も充実しているので、火鍋を食べ尽くした後はゆっくりデザートタイムを堪能しました。美味しい食べ物を目の前にすると、人の胃袋は無限大になるのですね。

何と言っても驚きなのが、どこの火鍋店も一人2000円もしないぐらいなのです。さすが美食の国、台湾。完全に心奪われました。

是非台湾へ行く際は、バイキング形式の火鍋食べ放題を体験してみて下さい。