【Femtech(フェムテック)とは?】女性の社会進出とフェムテックの広がり

皆さんは「フェムテック」という言葉は聞いたことがあるでしょうか。海外で市場が急拡大している「フェムテック(FemTech)」。2013年頃、ドイツの月経管理アプリ「Clue(クルー)」の代表Ida Tin氏が自身のサービスのビジネスカテゴリを称するためにつくった言葉で、女性(Female)と技術(Technology)を掛け合わせた造語です。「テクノロジーで女性のヘルスケアやライフスタイルをサポートしよう」という発想から誕生した、新しい市場を指す言葉でもあります。昨今、女性の社会進出や晩婚化を背景に注目が集まっており、これらフェムテックに取り組む企業が増え、資金調達額も増加しています。また、2025年には世界で5兆円規模の市場になると予想されています。

Femtech(フェムテック・Female × Technology)

女性ならではの健康課題(生理、妊活、不妊治療、産後、更年期障害、女性特有の疾病など)をテクノロジーを活用して解決するソリューション。
Femcare(フェムケア、フェミニンケア)
フェムテックのムーブメントと関連する、生理用品などの女性をケアする製品をタブー視しないデザインや、多様性あるサービスや商品。

対象となるのは、女性ならではの健康課題を解決したいと思っている、あらゆるライフステージの人です。フェムテックファンドができるほどなので、女性の健康向上という普遍的ニーズは、女性の可処分所得の増加と共に増えています。2〜3年前のフェムテックといえば、個人向けの尖ったプロダクトが多いイメージでした。そういったものはまだ多いものの、活況なアメリカでは、法人が妊活支援系(妊活相談、卵子凍結)を人材確保のための福利厚生として導入する流れが増えたり、フェムケアはセルフケアが世の中で見直されてきたことに影響して、ライフスタイルを豊かにするものとして概念が拡張してきています。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

フェムテックの幅広いサービス分野

フェムテックのカバー領域は広いですが、主要なカテゴリーとしては「妊娠/不妊」「月経」「更年期」「産後ケア」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」などが挙げられます。サービス自体も幅広く、アプリケーションなどのソフトウェアから医療機器や製品、診断サービスなど多岐に渡っています。例えば「妊娠/不妊」でいうと、オンラインでの不妊治療相談サービスや、自宅でできる妊孕(にんよう)力の検査キットなどがあります。

その一つが、米「KindBody(カインドボディ)」です。2018年創業のミレニアル世代をターゲットにした不妊治療サービスで、移動式のポップアップカーでAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査を無料で受けられるほか、検査結果に応じて実店舗で有償のカウンセリングなどを受けることができます。体外受精、卵子凍結、代理出産など様々な不妊治療の選択肢を包括的に提供していますが、中枢となる卵子凍結においては、テクノロジーを活用することで運用コストを下げ、市場と比べ安価で提供しています。企業への福利厚生としての導入も進めていますが、同社に限らず、卵子凍結など不妊治療にまつわるサービスを福利厚生として提供するサービスは増えています。米フェイスブックやグーグル、アップルなども福利厚生として導入しています。

日本国内でも同様の動きが出てきています。小田急電鉄や全日空、伊藤忠商事労働組合などが福利厚生として導入しているのが、妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」です。「月経」の分野では、「ルナルナ」(エムティーアイが提供)のような月経管理アプリの他にも、米「Cora」など、素材やデザインにこだわった生理用品を届けるサブスクリプションサービスや、ナプキン不要の吸水型サニタリーショーツを手がける「THINX」など、新しい生理用品を開発提供する企業も登場しています。

私の使っているフェムテックアイテム

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

ルナルナ
日本でもっとも使われている月経周期管理アプリ「ルナルナ」は、すでに使われている女性も多いかと思いますが、私も毎月の生理の記録管理に重宝しています。次回の生理予定日が分かるだけでなく、生理周期から毎日の身体のホルモンバランスや、それに伴う身体の変化の兆候も分かりやすく教えてくれるので、ほぼ毎日こまめにチェックしています。女性に寄り添って、快適に過ごすための生活のアドバイスをくれるのも嬉しいです。最近はアプリでの周期管理だけではなく、婦人科に特化したオンライン診察を開始しており、スマホアプリから産婦人科医療施設への受診や医師への相談が可能です。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

period.
生理用品の選択肢を増やすものとして、クラウドファンディングで目標金額を大きく上回る支援のあった、生理時に履くだけのパンツのブランドです。私はELLEマガジンの記事で見かけて知り、つい最近ELLE SHOPから購入しました。まだ未使用ですが、ナプキンを使用するほどではないけど不安な生理前や生理後に使うのに便利だと思い、少し値段は高いですが、試しに一枚購入してみました。これから使うのが楽しみです。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

なぜ今フェムテックなのか?

フェムテックの盛り上がりの背景には、「#Me Too」運動などをはじめとして、これまでタブー視されてきた女性が抱えていた課題や問題が可視化され、声を上げやすくなったということも影響しています。これまで、確たる理由もなく仕方がないと諦めてしまっていた、女性にとって当たり前の権利を、女性自身が求めていいのだという社会の動きがあります。

また、テクノロジーの進化も追い風になっています。センサーなどのテクノロジーを活用することで、これまで数値化されてこなかった女性の身体的データを手軽に記録することが可能になり、それらのデータを基に研究することで、より多くの課題解決へと繋げることもできるようになりました。今後、フェムテック企業と医療機関や研究機関との連携がより重要になってきます。もちろん、このデータ取得における問題もあり、フェムテックに限らず、身体的データ、とりわけ人に開示したくないデータをトラッキングすることは、データ流出や意図せず活用されるリスクもあるということです。セキュリティをはじめ、消費者自身がデータに対するリテラシーを高める必要も出てくるでしょう。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

女性の社会進出に寄与するフェムテックの広がり

フェムテックの広がりは、女性の社会進出に大きく寄与します。バイエル薬品の調査によると、月経困難症や月経前症候群(PMS)などよる経済的損失額は6828億円とされています。これらの課題を解決するだけでも、経済効果は大きいはずです。

フェムテックという言葉を聞くと、女性だけのものであると感じてしまうかもしれませんが、そうではありません。例えば、生理があるのは女性だけではなく、心と体の性が異なるトランスジェンダーの人々や、自身の性が従来の文化に当てはまらないジェンダー・ノンコンフォーミングの人々など、女性ではない人にも生理はあります。生理の期間、自分の性自認とは異なる違和感や不快感を身体にもつこともあります。そのため、先程紹介した生理ブランドなどは「生理がある全ての人へ」と謳っています。また妊活においても、女性だけの問題ではないでしょう。WHO(世界保健機関)によると、不妊の原因の約半数は男性にもあると言われています。同性パートナーとの妊活もあり得ます。フェムテックが解決する課題は、決して女性だけのものではありません。

日本国内においては、ジェンダー・ギャップ指数が121位とまだまだ低い現状がありますが、性差なく暮らして働くためには、女性の課題を個々人が解決するだけでなく、男性や企業側も理解する必要があります。フェムテックが市場として広がり、女性が抱えてきた課題が認知されることは、性差の溝を埋め、結果として誰もが自分らしく生活する社会の形成に寄与するはずです。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

日本おけるフェムテックサービスの伸び悩み

ここで触れておきたいのが、日本におけるフェムテックの行く末についてです。海外では優れたサービスが続々と登場していますが、現在、日本生まれのサービスはほとんどありません。これには、ジェンダー問題に対して日本全体の意識が低いことが影響していると考えられます。2019年12月17日、世界経済フォーラム(WEF、本部スイス・ジュネーブ)は、各国の男女平等の度合いを調査した2019年の「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しました。この指数は、経済、教育、健康、政治の4分野14項目に分類され、0が完全不平等、1が完全平等を意味している。日本の指数は0.652で、総合順位は対象の153カ国中121位、前年の110位からランクを落としており、06年の指数算出開始以来、過去最低の順位となりました。しかも、先進主要国首脳会議参加国(G7)で見ても最低の順位であり、中国や韓国よりも低い順位です。

欧米を中心に隆盛をみせるフェムテックの分野で日本発のサービスが誕生していないことは、こうした現状と関係があることは疑いようのない事実です。特に先程の「ジェンダー・ギャップ指数」で日本の点数が他国に比べて低いのが「政治」の分野です。「教育」と「健康」は従来、完全平等である「1」に近い数字を記録しており、比較的好成績です。また「経済」のスコアは前年よりわずかに上昇し、2018年の調査では117位でしたが、2019年は115位でした。他の先進国に比べると依然として低い数字であり、女性の管理職やリーダーの少なさや低収入が響いているとはいえ、やや改善の兆しが見られています。一方、政治は144位であり、2018年の125位から順位を19も落としています。この背景としては、世界で女性の参画が進んだことによって、日本との差が更に広がってしまったという事実があります。

フェムテックの分野では、女性ならではの意見や視点が不可欠であり、社会的に女性が活躍できる環境作りを進めなければ、日本におけるフェムテック市場は成長スピードを伸ばすことができません。日本において今後、フェムテックの市場が成長する可能性があるとしたら、それは政府がある程度の旗振り役となって、業界全体を主導していく動きを見せることが必要となるでしょう。かつて、ITやデジタル化が政府主導のもと、強力に推し進められ、現在では政府を挙げて5GやAIの取り組みを加速させているように、フェムテック市場を今後活性化させるためには、業界全体を牽引する推進力が必要です。そのためには、女性ならではの視点でフェムテックを考え、必要性の有無などを検討できる女性議員の存在が不可欠であるのかもしれません。今後、日本がフェムテックをどう受け入れ、どうサービスを開発していくか、その過程は日本におけるジェンダー問題解決のプロセスと多く重なり合っています。

Femtech, Femcare, フェムテック, フェムケア, ルナルナ, 生理アプリ, 月経周期管理アプリ, period., ピリオド, 生理用パンツ, 吸水パンツ, 月経パンツ, 生理下着, 生理用品, 生理アイテム, ジェンダーギャップ指数, 女性進出, フェムニズム, feminism, 美容, 健康, 美容ブログ, 健康ブログ, ライフスタイルブログ, SDGs

これからの日本でのフェムテックの広がりに必要なこと

社会全体で女性の健康についての知識や理解が深まり、話し合いのハードルが下がれば、フェムテックも自然と浸透していくはずです。日本ではまだまだ、女性の健康や体の問題について神格化したり、タブー視したりといった考え方が残っています。反対に、急進的でメッセージ性の強い意見などが目立つこともありますが、あまり気負わず、「女性も男性も健康管理は大切なミッション」というフラットな目線を保つことで、日本でフェムテックが馴染みやすくなると考えられます。

例えば、体温を測ることも、男女問わず健康管理にも役立つので、特別視されるようなことではありません。また、ミレニアル世代の多くは、「男らしさ」や「女らしさ」にこだわりを持たず、誰もが性差を問わず生き方や暮らし方を自由に選べるという意識が当たり前で、価値観やライフスタイルに関する意見交換などにも抵抗感を持っていないので、意識は少しずつ良い方向に変化しているはずです。

これからは、日本女性のライフスタイルやライフステージを汲んだサービスの展開が重要です。海外のサービスやアイテムをそのまま輸入するのではなく、UI(ユーザーインターフェース)、UX(ユーザー体験)、デザイン、サイズ感などは、日本的にローカライズされていた方が受け入れられやすいと思います。加えて、他ジャンルの企業と協力しながらのサービス展開も推進力になるでしょう。保険、遠隔治療サービス、フィットネス、スリープテック等との協業にも大きな可能性があると考えられます。今後もマインドやビジネスと様々な面で、女性の健康にまつわる前向きなディスカッションが増えて、フェムテックの認知や利用がさらに大きく広がることを期待しま
しょう!